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2016. 10. 01

レポート:京まふ国際漫画賞2016 中国部門受賞者 狼烟无言さん

京まふ国際漫画賞2016中国部門受賞者の狼烟无言さんよりレポートが届きました!
日本の漫画業界と中国の漫画業界の違いについても語られた興味深いレポートです。


 

本来であればもう少し早くまとめようと思っていましたが、少し忙しい時期もあって遅くなってしまいました。
京まふ漫画賞を受賞し、初めて日本に行って、日本の漫画について、特に新人漫画家がどのように日本でデビューをしていくのかについて知ることが出来ました。中国の漫画の仕組みと似ているところもあれば違うところも多かったです。このレポートでは、私の体験を通じて、日本で漫画家がどのようにデビューしていくのかを報告します。

9月1日
京まふ漫画賞を受賞したという知らせを受けました。日本で開催される授賞式に出席することになり、ビザの手配など急いで行うことになり大慌てでした。

 

9月16日
浦東空港から日本へ向かいました。到着すると、空港で丘丘さんがプレートをもって待っていてくれました。丘丘さんは来日中通訳をしてくれました。

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丘丘さんに送ってもらいホテルに到着。部屋は荷物を広げたらいっぱいになってしまいました。

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受賞者のサポートをしてくれる呉さんにホテルで初めて会いました。良い人そう。台湾部門の受賞者のnyaroroさん、nyaroroさんのサポートをするアカネさんとも会いました。

その後みんなでロームシアター京都にて行われたパーティーに向かいました。

パーティーでは日本の劇を見ましたが、日本語だったのでどんな話だったのかよく意味が分かりませんでした。とりあえず笑顔……会場では京都市長にもお会いし、名刺をいただきました。市長が名刺をくれるなんて、私たちが美人だったからかしら、なんて(笑)

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さらになんと会場では、『天馬の血族』の竹宮恵子先生にお会いしました!!子供の頃に『天馬の血族』を読んで漫画家を目指すようになったほど。『天馬の血族』は何度も読みました。

通訳の丘丘さんによると、竹宮先生は京都精華大学の学長でもあり、学生を連れてモンゴルへ行くほど(天馬の血族の舞台でもある)教育熱心な面も。すごく素敵な人で、会えて本当に感激しました!

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パーティーの後は、京まふ漫画賞関係者の方々、台湾の受賞者、韓国の漫画協会の方々と京料理を食べました。食事の前には自己紹介タイム。その後食事をいただきつつ、運営事務局の方から出張編集部の説明やどの編集部に行くか決めるようにという話をされました。ここにきてようやく出張編集部がどのようなものなのか理解しました。

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食事の後は夜遅くまでどの編集部に持ち込みに行くのかを話し合いました。すっかり遅くなってしまって、明日も早起きなのに、大変です……

 

9月17日

朝、ホテルで朝食を取り(卵の味が中国と違っていました)、京都国際マンガアニメフェアの会場へ!関係者の入場パスをもらいました。

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オープニングセレモニーの会場は、開始まで20分もあるのに満席。会場の外にもお客さんがあふれていました。お客さんは若い男性ばかりで、不思議な感じでした。中国では女性のファンもいるので、どうして男性ばかりなんだろう。

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オープニングセレモニーには京都市長、手塚プロダクション社長、フランスとイタリアの京都駐在大使、政治家がいて、日本の漫画はアジアの文化娯楽に留まらず、都市規模の観光産業に影響を与えるほどのものだということがわかりました。

セレモニーには声優も来ていたので、これが男性が多い理由かも。

 

セレモニーの後は自由行動。会場内を見て回りました。

『鬼灯の冷徹』の原画展があったり、中国のCCGフェアのように新商品の紹介のコーナーもありました。

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自由見学終了後、出張編集部の作戦会議。運営スタッフの方が、私の作風に合う編集部をいくつか提案してくれました。小さいところや知名度が低いところは掲載のハードルは低いけれど、影響力において劣るため、大きい出版社を目標にするようにおすすめしてくれました。

また、アドバイスとして日本と中国の漫画家のキャリアについて異なる点を教えてくれました。中国ではネット中心ですが、日本では依然として雑誌媒体の新人賞を通ることが一般的。雑誌の新人賞以外の方法が、今回の出張編集部にように、編集者たちと直接交流することです。

 

会場では、出張編集部からデビューや掲載になった方々の紹介コーナーがありました。持ち込まれる原稿数の多さを考えたら、採用される確率は高くない。事務局スタッフによると、昨年受賞したANTENNA牛魚さんの作風は日本の美的センスに良く合っていて、絵も上手だったので順調に選出されたらしい。このような事例は稀なので、心の準備をしておかないと……

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主催側に、漫画『バクマン』から漫画家のなりかたを学んだと話したら、あの漫画は理想的に描きすぎていて、主人公2人の道のりは順調すぎると言っていました。

この日のランチは伝統的な日本料理でした。

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午後は京都マンガミュージアムへ。館内を見学して、マンガミュージアムについて説明を受けました。マンガミュージアムには20~30万冊の蔵書があり、閲覧可能な漫画は館内のどこでも読めるそうです。年表があったり火の鳥のモニュメントがあったり、そのほかに企画などもありました。

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館内には漫画家のサインが沢山ありすごい光景!

みなさん知っている作品を探してみてください。

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出展者向けの感謝会がありましたが、10分程で食べ物が無くなってしまいました。市長の挨拶があり、あちこちで名刺交換がされていました。みんなが日本酒をおいしそうに飲んでいたけれど、私はちょっと苦手だったかな。

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感謝会の後は出張編集部の歓迎会へ。日本人は普段は生真面目で本音を言い合うことが少ないけれど、居酒屋に来るとお互いの距離が近づいて、大声ではしゃぐこともあるみたい。

しばらくすると、参加者同士で漫画を見せ合いが始まりました。私も参加していた編集者に

《血手弗兰克》(受賞作)、《山海师》、《暴走武林学园》の3作品を見てもらいました。

編集者の方はその間ほとんど飲み物や食べ物には触れず、すごく真剣に見てくれました。読んだ後に肯定的な意見をいただきました。

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トキワ荘プロジェクトに参加している女の子が彼女の原稿を見せてくれました。二つの頭を持つ女の子の話でした。彼女は漫画家を志していて、何度も失敗しながらも今後も挑戦するつもりとのこと。

ここでトキワ荘について説明します。日本の漫画の歴史に詳しい人は、手塚治虫先生が住んでいた場所を知らないはずがないですよね。この木製アパート『トキワ荘』は経年劣化のため、もう存在していないけど、トキワ荘プロジェクトでは、漫画家の卵のために、廉価な住宅や漫画家のコミュニティを提供し最も難しいハードルを乗り越えられるようにサポートしています。
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会の終わりで、呉さんから作品を翻訳について提案をもらいました。呉さんはとても責任感がある人で、私の作品の一部の和訳が終わっていないことが、明日の出張編集部の際不利になることを心配し、『血手弗兰克』を送ってくれれば、明日までに翻訳して印刷するということでした。

 

9月18日

朝食後に呉さんと合流。昨日の提案の通り、呉さんが『血手弗兰克』を和訳したものを持ってきてくれて、さらに作品の世界観とあらすじ、それぞれの出来事とストーリーも和訳してまとめてくれていました。印刷もしてくださって本当に感激しました。仕事熱心!

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京まふ会場に向かい、出張編集部の作戦会議。どの編集部にどの順番で回るのかを決めて、呉さんから、編集者とどんな話をするか相談しました。呉さんは経験も豊富な優秀な編集者で、どういったことに注意するべき以下のアドバイスをしてくれました。

出張編集部の会場はすでに準備が整っていました。それぞれの編集部のパネルには各編集部の最もヒットした作品が掲示されていて、最新の新人賞の募集要項が置かれていました。その内容から、各編集部がどのようなポジションなのかがわかります。

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出張編集部の開始前に、京まふ漫画賞の表彰式がありました。私が挨拶をする番になりましたが、恥ずかしいことに通訳が必要なことを完全に忘れていて、中国語で一気に話しきってしまいました。幸い、呉さんの記憶力が素晴らしくて、ほぼ完ぺきに通訳してくれました。

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表彰式終了後、出張編集部が正式に開始。おおよその流れは以下の通り。

まずは受付で希望の出版社を伝えると、番号札とエントリーシートをもらいます。エントリーシートにはには簡単な個人情報を記入。氏名と連絡方法の他に、編集者の参考のために、発表済の作品や受賞歴を書きます。

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そのあと番号札をもって希望する編集部のブースへ行き列に並びます。聞いたところ、全部で69編集部が来ていて、みんなが知っている有名な編集部はほぼ揃っているとのこと。

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各編集部のブースはパネルの後ろに設置されていて(形がまるでお見合いパーティーのよう)、大きい編集部ではすべて2~3名、小さいところでは1名の編集者が来ていました。特に人気がある出版社のブースでは予約券を取った人が多すぎたため、ブース内でも列に並ぶ必要がありました。

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自分の順番が来ると、自分の原稿を編集者に見てもらえます。編集者もいろんなタイプがいて、作画と物語が良くなくても、最初から最後まで細かく見る人、最初は詳しく見るけど後半は見るスピードが速い人や、パラパラめくっておしまいの人もいました。当然これは作品に対する興味があるかどうかと関係があるのだろう。

持ち込みに来た人たちのほとんどがB4の冊子を持ってきていて、作品を原稿に描くのが主のようでした。これはおそらく中国の漫画家と大きく異なる点で、日本の作者のほとんどは原稿用紙につけペン、トーンなどの伝統的なツールを使うが、中国ではパソコンを使わない人はほぼいないでしょう。

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作品を吟味し終わると、編集者は様々な意見やアドバイスをくれる。もし、作者や作品に可能性を感じれば、今後も連絡が取れるように名刺を渡してくれます。

10時~17時までいろいろなところを回って活動してへとへとになってしまいました。

 

私たちが行ったブースは以下:

ヒバナ(青年誌):主な作品『アイゼンフリューゲル』、『ドロヘドロ』等

ビッグコミックスピリッツ(青年誌):主な作品『20世紀少年』、『アイアムアヒーロー』等

モーニング(青年誌):主な作品『鬼灯の冷徹』、『宇宙兄弟』、『チーズスイートホーム』、『ピアノの森』等

週刊少年マガジン(少年誌):主な作品『七つの大罪』、『FAIRY TAIL』、『金田一少年の事件簿』等

月刊Asuka(少女誌):主な作品『彩雲国物語』、『今日から㋮王』、『裏切りは僕の名前を知っている』等

月刊ハルタ(青年誌):主な作品『坂本ですが?』、『不死の猟犬』等

 

各編集者のフィードバックはそれぞれ違っていて、納得できるもの、驚かされたもの、簡単には同意できないものもありました。中でも特に意義のあるものを紹介します。

 

はじめに《血手弗兰克》について。

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(多くの編集者はこの作品を見終わると熟考を始めた。結論を出しかねているようで、それを見て不安になりました。) 一人の編集者が中国でのこの作品の読者年齢層は?と尋ねたので、たぶん中学生と大学生ですと答えました。

編集者は「この作品には歴史的考察が多く含まれているので、とてもリアルに仕上がっているので、このような作品はなかなかない。ただ、描写があまりにもリアルなので、向いている年齢層はもっと上で、50歳以上向けかと思った」と回答。この出版社のターゲットは20-30歳なのに…

他の編集者によれば、この作品は文字が多いが、今の大人たちは文字を読むのが好きではなく、逆に小学生がこういう作品を受け入れられるとのこと。だから、青年向けの漫画は文字が多いものは少なく、作画で物語を描写する手法が採用されているとのこと。

これはまさに予想外でしたたが、よく考えてみれば、『バクマン』のように文字が多い作品は小中学生向けの週刊少年ジャンプで連載されています。おそらく、人は年齢を重ねると文字を読む時間と手間がどんどんなくなっていくことに関係があるか?漫画を読む人と小説を読む人はやはり違うな。

人を惹きつけるような幻想的な要素を加えたほうがいいという助言もあった。写実的な推理ものはニーズが売れにくいのだろう。

今回はフランクの過去を描いた序章だったが、フランクにスポットライトを当てた正編もぜひ次回は拝見したいという意見もありました。

結論:日本の漫画は各雑誌のポジションがはっきりしていて、具体的な年齢ターゲット、例えば、小学4年生、主婦、サラリーマン向けまで決まっている。これはネットで漫画を読む中国と完全に異なる点である。『フランク』は特定のポジションを狙った作品ではなかったので、編集者たちも評価しづらかったのではないか。


続いて、連載中の『山海師』に対するコメントを紹介します。

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『フランク』と『山海師』に対する反応はそれぞれ違って、『山海師』が漫画らしくてわかりやすいという声もあれば、『フランク』の作画のほう魅力的と言う人もいました。
特に印象深かったのは、爪白編の物語が長すぎるので、短くしたほうが良いというアドバイス。ただ、このアドバイスに対して私は真逆の考えを持っていた。

結論:このような考えの違いは、向こうが雑誌への掲載を前提としているからだと思った。掲載されるページ数に制限があるからではないか。


《暴走武林学园》では登場人物の年齢について認識が編集者と異なった。

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結論:日本の漫画のルールは非常に厳格である。あるべき要素、あってはいけない要素が厳密に決まっている。規格外のもの対する受容性はあまりない。まるで七言詩のよう。

 

出張編集部には若者の他に主婦やおじさん、さらには高齢者までもがかなりの年下の編集者にペコペコ頭を下げていた。この人たちは実現が難しい長年の夢を諦めずに追い続けてきたのだろうか?この光景を見て、私は日本を漫画大国だと感服すべきか、それとも永遠に実現しない夢に心を痛めるべきか、と考えてしまいました。

 

丘丘さんによると、過去の調査では最初の3つの作品で売れなければ、その作者は何十作も描かないと掲載の機会は得られないとのこと。
日本の漫画ビジネスの一端を垣間見て、日本と中国の漫画に関する文化や仕組が異なるため、中国人作家が日本で成功するのは難しいのではないかと思いました。
どのような違いがあるのか、それぞれについて考えをまとめてみました。

 

日本の漫画ビジネスのメリットとデメリット:
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日本では投稿や持ち込みをして、編集部の選考を通ったものが読者のもとに届く。

メリット:

1、雑誌のポジショニングがしっかりしているので、読者は自分の読みたいものを選びやすい

2、掲載できるかどうかの選考があり、選考を通ったものだけが掲載されるので雑誌の質が担保されている

3、作者を導きやすい。どのような作品が求められているのか、編集者とのやり取りの中で雑誌の方向性とも合わせて作っていける

 

デメリット:

1、雑誌はページ数の制限があるので、作者側にとってページ数の制限はひとつのハードルになる。ボリュームに合わせて話を展開する必要がある。

2、競争が激しすぎて、キャリアの初期において掲載できる機会がなかなか得られない。中国ではインターネットがメインなので、どんどん掲載してフィードバックを受けられるが、日本ではその機会が少ない。

3、雑誌の売れ行きについても作者にプレッシャーがかかる

 

中国の漫画ビジネスのメリットとデメリット:

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中国ではインターネット上がメインで、プラットフォームになっている。

メリット:

作品を発表する場所があり、作者は自分で自由に発表が出来る

読者層が広い。はっきりとポジショニングがされていないため、ひとつのプラットフォームに老若男女が集まり、多くの人の目に触れる機会がある

数字とフィードバックが直接的で早い。掲載するとすぐにどのくらいの人数の人が閲覧したのか、感想のコメントをもらうことも出来る。

 

デメリット

経済的に不安定。ネットに載せてもお金に繋がらない。

プラットフォームの競争率は高く、特徴や技術力がないと埋もれてしまう

プラットフォームには自由に掲載することが出来るので、レベルのばらつきやジャンルも幅が広く、読者としては自分の好みの作品を見つけることが難しい

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9月18日

いよいよ帰国の日。
帰りの日に呉さんから、呉さんが編集をしている雑誌『キッチュ』をいただきました。
ユニークな作風な作品が集まっていて、『キッチュ』を通じて発表する機会を増やす役割を担う雑誌でした。みなさんもよかったら見てみてください!

http://studiokitsch.info/

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