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2014. 06. 23

編集長の部屋(1)後編:アフタヌーン宍倉立哉編集長

「編集長の部屋」(1)アフタヌーン編集長、宍倉立哉さん(後編)です。

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- 前編「編集者とは、その作家の一番身近にいる良い読者だが、その作品を一番突き放して見ている存在」
- 中編「今の新人に感じることは、応募者が雑誌を読まなさすぎることです。」
- 編集長の部屋とは?

四季賞で一番見ることは、「その作家が、どのくらい描けるか?」という才能評価です。

―― 四季賞受賞作と連載に通る作品は傾向が違うなと思う時があります。

四季賞で一番見ることは、「その作家が、どのくらい描けるか?」という才能評価です。

この人は、キャラがどれ位描けるとか、良く判らなくても未知数のストーリーテリングとか、その時点での実力よりも、その人の才能に賭けることが出来るかどうかと言う点を見ています。

やっぱり、実際に連載する時は、更に上の作品を描かないとなりません。

連載作家は、雑誌を支えていくものです。才能を見せることに留まらず、実際に読者を楽しませることが出来る実力を発揮する必要があります。結果的に、四季賞の作品と掲載作品に違いが生じていると思います。

 

―― その差は、編集者とともに作るものですか?作家の地力ですか?

その辺は永遠のテーマだと思います。このインタビューが課題としている、作家と編集者のミスマッチングの問題にもつながるものだと思います。

『おおきく振りかぶって』のひぐちアサさん、『げんしけん二代目』の木尾士目さんたちも、はじめからヒットを出したわけではありません。前作は、目立った成果が出なかったのですが、担当編集者はしっかりと付き合って作品を制作掲載していきました。単行本の部数という結果が出た後、変わるきっかけを作っています。

 

―― 受賞後に、ヒットするまでにステップがあるということですね?その壁を超えて行けるパワーはなんだと思いますか?

勿論一発目からヒットすれば良いのですが。
「自分が描いたものが(読者に)届かなった。」という思いがあるかどうかです。

 

―― 才能的に、同業者にはとても評価されるけども、マンガとしては受けなかったということはありますよね。
宍倉さんの言う所の、作品と商品の狭間で悩んでいることだと思いますが。

そうですね。才能を商品と言ってしまうと誤解が生まれますが、僕らがいる商業マンガ誌の世界では求められる才能でないと漫画家として成立しません。かといって、求められるものだけを描けばいいのかというと、それも違うと思います。

 

―― どうすれば、そこを脱することが出来ますか?

バランスが難しいとは思いますが、自分のスタイルを貫きながら、自分の才能に少しずつ異質なものを取り入れてみることだと思います。自分のやり方に固執し過ぎると、なかなか良いプロになれないと思います。それに気づくのは、本当に自分自身が「自分が変わりたい」とどれだけ強く思えるかですね。

 

―― この仕事をしていると、20代のなるべく早い段階でプライドを一度壊された方が上手くいっているように思います。

そうですね。

『宇宙兄弟』の小山宙哉さんも、初連載『ハルジャン』は10週打ち切り、その後『ジジジイ-GGG-』も評価は高かったがそれほどヒットはせず、小山さんと佐渡島君(元講談社、現コルク社代表)は「次は、皆をもっと楽しませるものを描きましょう。」というようなことを考えたと思います。それは『ハルジャン』の失敗があって出来た事だと思います。2人は最良のものを描いてきたと考えていると思うのですが、『宇宙兄弟』に至って、本当の意味で小山宙哉さんオリジナルの作品が描けたと思うのです。

 

―― 四季賞の才能評価とは、もう少し踏み込むと、どういうことなんですか?

細かくいえば、絵とか構成など色々ありますが、「その人が持っている世界観」なのかなと思います。少し抽象的ですが。「自分は、こういう世界を描いています」ということを、背景なども込みで、どう作れるかと言うことだと思います。

例えば『蟲師』の絵は漆原さんしか描けないと思います。

漆原さんが描くから、「山」や「森」が、ちょっと恐ろしくもあって、懐かしくもあって、でもそこにいきたくなるような気持ちになります。他の人が同じような描き方をしても、ただの山だったのだと思うのです。

そういうものを持っているかどうかを、一番見ているのが四季賞だと思います。

 

―― そういった世界観と言うものは、新人作家はどう培っていけば良いのでしょう。

私が(編集者として)外から見ていて思うのは、自分が好きなものを出来るだけ集めることが一番早いのではなかいかと思います。アニメでも音楽でも芸術でもなんでも良いと思います。

そうやって集めて、自分が好きなものの何が好きなのかを突き詰めて表現していくと、世界観のようなものが出来上がってくるように思います。

例えば、うちには芦奈野 ひとしさんという作家さんがいます。芦奈野さんの作品にはよくバイクが出てきます。自分が好きなものをどこに置いたら一番楽しく描けるかということを見つけるのも重要だと思います。

 

―― それが独りよがりになってしまわないようにするにはどうしたら良いと思いますか?

その為に、編集者がいて、一緒にその先の読者を考えていくのだと思います。

例えば、藤島康介さんに会うと判るのですが、プラモデルがお好きで、艦これ、音楽、車と多くのものがお好きで、それらが作品に反映されていく。

モーニングからアフタヌーンに移って思ったのは、アフタヌーンの場合、作家も編集者も好きの度合いが突き抜けている人が多いと思いました。オタク、マニア、フェチとか、良い意味でそういう集団だと思います。勿論、モーニングにも突き抜けた人はいますが、少し色が違います。

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アフタに欲しい新人は、志が大きい人。

―― ずばり、宍倉さんはどんな新人が欲しいですか?

一言で言うと、志が大きい人です。自分のマンガを面白いと思っていて、それで世の中を楽しませようと思っている人です。

新人には、「あなたは、ほんとにマンガじゃないとダメなの?」と聞きたいです。マンガ家を続けることは、本当に苛酷ですが、それを本当にやりたいのかどうか、聞きたい所です。

直接担当したことはないですが、かわぐちかいじさんは、本当に志が大きいです。

四季賞の審査員をされていただいたときに「最近の新人作品は日常の話が多くて、届くのが半径5m位に届けば良いやと思って描いているように思う。海の向こうまで届けと思って描けば、本当に反響が返ってくるんだよ」というようなことを、『沈黙の艦隊』が海外でも反響があったことを例に話して下さいました。

以前、井上雄彦さんが『宇宙兄弟』というタイトルを褒めていました。兄弟だけでも面白いけども、宇宙という大きいものがつくと面白いと。

 

―― 少し話が変わりますが、雑誌としてアフタヌーンの正反対のものってどんな雑誌だと思いますか?

(注:2年前に訪問した時は、週刊少年ジャンプかなというお話があり、敢えて同じ質問をしました。)

雑誌と言うより、日用品とか、あってもなくても良い娯楽品の中で、アニメも雑誌も同じくくりで反対側にあるかなと思っています。最近、自由にやっていて面白そうだなと思う雑誌は『ハルタ』さんとかですね。マンガを多くの人に読んでもらおうと、夢とか思いがあるなぁと思います。

 

――『ハルタ』への評価とは?

『ハルタ』さんは、絵を頑張っていると思います。巷では背景白いマンガが増えたり、デジタルのテンプレ背景だったりする場合もありますが、『ハルタ』は本当に絵が好きな人が描いていると感じます。凄い手数で。夢があって良いと思うし、その中でヒットを出していて素晴らしいです。

『別冊マーガレット』さんも見ていて面白いですね。

 

 

おすすめの1冊

――宍倉編集長おすすめの1冊を教えていただけますか?

アフタヌーンとgood!アフタヌーンで、1冊ずつ出させていただきます。

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月に吠えらんねえ 清家雪子(月刊アフタヌーン)

近代詩歌句からイメージされたキャラクターたちが住まう近代□(しかく)街を舞台に、萩原朔太郎の詩からインスパイアされた主人公、朔さんの大活躍を描くファンタジー(*萩原朔太郎が主人公ではありません)。と説明すると「?」が並ぶことでしょう。でも一読していただければ、作者、清家雪子さんの暴力的なまでの愛情によって緻密に構築された世界にぶっとばされること必至です。エロティックな近代□街に旅してみたいと思わせる素敵な漫画です。

 

 

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ウィッチクラフトワークス水薙 竜(good!アフタヌーン)

アニメでご覧になった方も多いと思いますが、原作の漫画をぜひ読んでほしいです。多華宮君や火々里さんら魅力的なキャラクターたちの活躍も実に読みごたえがありますが、水薙さんの素晴らしい絵に触れてほしいです。『ウィッチクラフトワークス』のように絵としての“美しさ”と“可愛らしさ”が高いレベルで両立している漫画というのはなかなか少ないと思います。

「アフタヌーン」だったら藤島康介さんの『ああっ女神さまっ』や現在連載中の『パラダイスレジデンス』が近いと思います。絵としての魅力にあふれていて、実に面白いストーリーがつまっている漫画。そう考えてみると『ウィッチクラフトワークス』は実に“アフタヌーンらしさ”にあふれている作品だとも言えます。四季賞に応募する方たちには特に読んでほしい漫画です。

 

—-宍倉編集長、ありがとうございました!

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「編集長の部屋」過去の記事など目次

インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野

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