編集長の部屋(1)中編:アフタヌーン宍倉立哉編集長
「編集長の部屋」(1)アフタヌーン編集長、宍倉立哉さん(中編)です。
- 前編「編集者とは、その作家の一番身近にいる良い読者だが、その作品を一番突き放して見ている存在」
<中編>
今の新人に感じることは、応募者が雑誌を読まなさすぎることです。
-アフタ読者に多い年齢層は?
30台半ばが多いですが、下の層が入って来てくれるようにしたいと思っています。
--アフタ本誌、good!、モアイの位置付けはありますか?
モアイは、あくまでの情報を流すサイトとして機能しています。アフタとgood!は兄弟誌、アフタはコアなマンガ読み、good!はライトなマンガユーザーと見ています。部数は、アフタが公称8.6万部、good!は3.6万部です。
--ライバル誌はありますか?
ライバルと言うか、どうにかなんないかなと思っていることはあります。
音楽業界を見ても、近年は、ライブなどの『生もの』が受けています。その、『生もの』に負けない雑誌を作れないかと考えています。
現在、大手書店ではプロモーションのためにライブペインティングなどのイベントを仕掛けているのですが、そうした生な行為を超える価値を持った雑誌を作りたい。ライブと雑誌を読む事を等価以上のものにしたい。
―― アフタヌーンで連載が決まるプロセスを教えてください。
今は、個々の担当者がネームを作り、ぼく(宍倉編集長)の判断で決めます。相談役に城戸(good! チーフ)がいます。ネームは編集部の誰かに読んでもらって感想をもらってくることを必須にしています。。特に、定期的な編集会議があるわけではありません。アフタもgood!も最終的な責任者は僕ということになります。
連載に至る基本的なプロセスは、四季賞を受賞して、担当編集とネームやプロットを作り上げて、それが上がっていく形です。外部の作家さんに依頼をする場合は、事前に誰に話を持って行くか相談が入り、個々の担当者が話を進めていきます。
―― 上がってくる連載ネームはどれ位の割合が新人になりますか?
1/4位が新人だと思います。
―― 上がってきたネームが、最初から通る事はないかと思います。次に同じ新人が連載ネームを上げるペースはどれ位になりますか?
それは、担当者のやる気と、作家のめげなさ加減だと思います。
ある中堅作家のアシさんが、連載ネームで一度ボツを出されました。そしたら、心が折れて持ってこなくなってしまいした。その方が、アシ先の先生に相談したら「編集者のことなど気にせずに、すぐに次作を持って行くべき」と話してくれたみたいです。その通りで、新人は、すぐに次作を持っていくべきだと思います。
―― それは、完璧なものを目指してしまうからでしょうか?
そうですね。最初から完璧を目指しても良い事はありません。一度、提出したネームをひとりで抱え込んでしまい、次の提出まで期間を空けてしまうよりも、一度ダメが出たからと言ってもめげずに何度も少しでも変えてさっさと持ってきた方が結果的には良いと思います。編集者をガンガン利用したほうが得策だと思います。
―― ちなみに、新人が「名刺をもらう」ということを重視していることはどう思いますか?
アフタヌーン編集部の場合、あまり関係ないですね。次回は新しいネームを持って来いと言われた方が、期待をされていると思います。
―― 受賞から計算して、だいたいどれ位の期間で連載作家になれるものですか?
人それぞれによりますね。十代でデビューして、連載開始が二十代前半なら、体力的にもまだ大丈夫。だけど青年誌の場合30歳くらいまでには連載開始していないと難しいかなと思います。
受賞から連載まで2~3年位というのが理想的な時間帯だと思う。それ位でないと、脱落率が上がっていきます。
自分の為作品を守るのと、作品を作ることは違う事なんですよね。
―― マンガ家は、自分のレベルとプロのレベルを比較するのが判りにくいと思います。野球や陸上なら、数値の記録で自分のレベルは判りやすい。マンガはその辺が難しいし、賞も多いのでは?
四季賞に年間800~1000ほど応募があって、その中から受賞作から選んでいます。確かに漫画雑誌は多いし、特徴が被っている雑誌も多いです。でも、今の新人に感じることは、応募する雑誌を読まなさすぎることです。漫画家としてデビューするということは最初に雑誌に載ることだから、自分が載りたい雑誌をきちんと決めて、その雑誌を良く読んで、雑誌の方向性を意識してほしいですね。
―― 割と、色んな雑誌を渡り歩く人が多く見えます。特に「優しくしてくれる編集者」と付き合おうとしてしまいます。
そりゃ、編集者は優しくしますよね(笑)それについては、伴走者たる編集者とどう付き合うかが重要です。一番は「目の前の編集者がどうかということではなくて、雑誌の向こうの読者がどこにいるかということを想像してみること」が大切だと思います。それが出来ないと、優しいだけの編集者さんについていってしまい、漫画家としてどこに向かっていけば良いか判らなくなってしまうと思います。
-- 連載作品が上がってくるタイミングは?
編集部全体で連載候補作が月に2~3本くらいです。外部の作家さんにお願いする場合は、打合せを通さずに掲載が最初から決まっていることもあります。
―― アフタヌーンで掲載する人の場合、どういうルートで上がってきますか?
基本的には、編集部への投稿・持込がほとんどだと思います。持込即連載ではなく、基本的に四季賞に一度応募して賞を取って、次に読み切りや連載を狙うという形がほとんどです。スカウトなどもありますが、少ない印象です。
―― 必ず四季賞を通す理由は何かありますか?
応募作品を編集部の複数の目に触れさせて、担当編集者が多くのフィードバックを作家に持ち帰って、作家と担当編集者とで打ち合わせの参考にしてほしいからです。稀に、四季賞を通らずに連載ネームに入る場合もありますが、あまりいません。
―― 連載を決める際はどう決めていますか?編集部全員合意ですか?
全員では決めていません。私が面白いと思えば載せることもありますし、先に話した、チーフの城戸との話し合いだけでも載せます。
―― 作品のバランスなどは考えていますか。
考えています。たとえばアフタだと、小難しい話が多くなっちゃったから、軽く読めるものが欲しいなとか考えることはあります。good!だと「“恋愛”と“戦争”と“バトル”が欲しい。」など、チーフの城戸から方向性が出てきたりします。
―― 新しい作品が欲しいという話がありましたが?
新しいとは、天才が全く新しいものを生み出すこととも言えますが、描き手が新しい視点を持って、過去あったような作品をまったく新しい切り口で描いていく事もありだと考えています。
―― 新人にとって新しいとは「過去の影響を受けないようにしよう」と考えている場合が多く、結果的に没個性的なものが多いのではないかなと、入居者を見ていると思います。独創よりは引用のほうが重要かと思いますが、そういうところは気付きにくいかなと悩んでいます。
本人が気づかないと気付けないですよね。新人は若くて時間があると考えているので、よほど追い込まれるようなことが起きないと本気にならないですよね。ホントに後がないと思ったら、人真似でも良いからやると思います。それが案外オリジナリティーに繋がったりするのですが。
例えば、結婚することになったとか、実家に戻らなければならなくなったとか、一つのきっかけで、漫画を続けられない状況に追い込まれると人は変わりますね。そういう外部要因でもない限り、本当に追い込まれることは少ない印象です。
―― 若くしてデビューした人の作品などを、行き詰まっている人を見せることもあるのですが、短期的にしかショックを受けてくれなかったりで、難しかったりします。
それって、「あの人は才能があったから。。。」みたいな考えにも繋がりませんか?
―― そうなんですよー。あと、悩ましいのが、私は私と開き直っちゃう人ですね。
四季賞に応募してくる人にが、自分の悩みや、世間に受け入れられないなどの話を、ファンタジーや幽霊に仮託して描いてくる人が多いですね。それはアリなのですが、その後、どのようにして作家として読者を楽しませていくかを考えることが大事です。商業漫画を描くのであれば、その先がないと描く意味がありません。
―― アフタに、特別多かったりしませんか?
そうなんですよ、多いんですけども、(商品として)先が無さそうな作家の作品は載りません。
「自分の為作品を守るのと、作品を作ることは違う事なんですよね。」
<ここまで中編>
次号後編:四季賞で一番見ることは、「その作家が、どのくらい描けるか?」という才能評価です。
インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野
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