編集長の部屋(6)前編:comico 北室美由紀編集TL-2~3年でサービスを辞めてしまうようなことは、絶対にないです!
「編集長の部屋」コーナー6人目は、comico編集部、北室美由紀さんです。2013年10月にサービスを開始し、現在はアプリのダウンロード数も650万を突破。連載作品も100タイトルを超えています。comicoには編集長と言う役職はないですが、編集チームのチームリーダーである北室さんにお答えいただいてます。
<comico 北室美由紀編集チームリーダー(前編)>
2~3年でサービスを辞めてしまうようなことは、絶対にないです!
―― まずは、サービス開始1周年と650万ダウンロード達成、おめでとうございます。comicoの設立の経緯についてうかがわせてください。
NHN PlayArtは昨年4月に実施されたLINEとの会社分割以降、ゲームを中心とするエンタテイメント企業として新たなスタートを切りました。PlayArtという社名は、「ユーザーに新しい体験や驚きを提供するエンタテイメントサービスを作ろう。」という意味に由来しています。
その中で、comicoはゲームに次ぐ新たな事業の柱にするべく、昨年10月にサービスを開始しました。コミックは既存事業との親和性も高いですし。ユーザー規模の拡大にともなってcomicoが注目されるようになり、その期待と責任の重さをひしひしと感じています。
―― なるほど、事業の新たな柱とすべくかなり気合を入れて始められたのですね。逆に言えば2~3年ですぐに辞めてしまうようなことはないと。
それは絶対ないですね。断言できます!
―― サービス立ち上げ時のエピソードを聞かせてください。
この事業をスタートした時は、サービスの立ち上げのスピードを重視して10人未満の少人数のチームで始動しました。人数は少なかったものの、その分メンバーの意思統一を図ることはすみやかで、「新しいことをやってやろう!」とメンバーの志は高かったです。サービス検討当初は、縦スクロール型にしようとか、カラーにするかどうかも決まってなかったくらい、本当に一から検討しました。
―― 新しいとは、既存の事業と比べての新規性ですか?それとも既存のマンガに対しての新規性?
それは、既存のマンガに対してです。スマホに特化した形にするとか、カラーにするとかですね。
以前は電車の中での時間の使い方として雑誌や新聞を読んだりする姿が多く見受けられたと思うのですが、現在はスマホを利用しているシーンを多く見かけます。ゲーム、ニュース、SNSとなんでも見ることが出来るスマホは、いまや生活密着メディアになっていますよね。一つはそのスマホに最適化したコミックサービスを作りたいという部分での新規性。そしてもう一つ、雑誌等の低迷によって作品発表の場を失っている作家さんに“新たな活躍の場”を提供するということも大切な要素としてcomicoを立ち上げました。
―― 今、comicoの状況で公表できる数字は何でしょうか。
ダウンロード数が650万(本文公開の12月上旬時点)、comicoで連載中の公式作品数が107作品、ベストチャレンジが1,109作品です。チャレンジ作品を含めると、全体で1,282作品を提供しています。
―― 「公式作品」「ベストチャレンジ作品」「チャレンジ作品」それぞれの区分けはどのようになっていますか。
comicoの作品は以下の図のような形で3つの階層に分けて提供しています。
ちなみに、今、公式作品として公開している約1/3の作品がチャレンジ作品から上がってきた作家のものとなっています。残りの約2/3の作品は、comicoのサービス立ち上げ時に運営側でスカウトした作家の作品です。現在は毎日のように作品投稿があるので、今後は「チャレンジ」「ベストチャレンジ」「公式」とステップアップしていく作品がどんどん増えていく形になると思います。
まずはそれぞれの作家さんに、読者から支持される作品を作っていただくことが何より大切だと考えています。
―― 現在、公式作品を書いている人たちの原稿料はどうなっていますか。
連載作家の原稿料は、月額20万円+人気度に応じたインセンティブをお支払いしています。あとは、作家さんへの支援策として有給休暇制度があったり、年に1回健康診断を受けてもらったり、メンタルケアのカウンセリングサービスをご用意しています。
―― 実力差によって基本原稿料の差はないのですか?
ありません。人気度から来るインセンティブで差があるだけですね。
―― 健康診断などはNHN PlayArt社のサービスを受けているという事ですか?
いえ、作家さんは全国各地にお住まいなので、健康診断などは自分で受けていただいて、後日領収書をもとに精算する形で行っています。
―― ほほー。作家さんの地方点在具合はいかがですか?
約100人中、30~40人位が首都圏です。それ以外では少し大阪が多いくらいですかね。海外在住の作家さんも8名ほどいらっしゃいます。
―― 打合せは、やはりスカイプなどが多いのでしょうか。
スカイプ、電話、LINEが多いですが人によってバラバラですね。ただ、打合せは対面に勝るものはないと思うので編集部では3か月に1回は会って打合せをしたいと考えています。海外在住の方は、なかなかそうはいかないのですが、半年に1回程度、会社の方で作家集会を開催していますので、海外にお住まいの作家さんもそこにお越しいただいてお会いするようにしています。
―― comicoは、『ReLIFE』で単行本化をしていますが、ほかに書籍化が進んでいる作品はありますか。
『ReLIFE』以外にも書籍化されている作品があります。例えばPHPさんから『しみことトモヱ』が、講談社さんから『artist ベレーちゃん』が出版されています。(*:脚注、インタビュー後更に4作品がKADOKAWAから単行本化されることが発表。)
ただ、会社では紙の単行本化が全てと考えているわけではありません。NHN PlayArtはゲーム事業を行っていますし、この先の展開としてゲームやグッズ、アニメ化なども考えています。
―― アニメ化とすると、通常の製作委員会方式なども検討の中にあるのですか?
具体的なスキームとして現時点で申し上げられることはないのですが、検討の中に入ると思います。
―― ゲームに強いNHNさんがIP展開するなら、やはりゲームへの展開を考えると思います。ただ、今の所、ゲームにしやすい感じの作品はあまり見受けられないかなと思うのですが、いかがでしょうか。
強いIPが育てば、ゲーム化は工夫出来るかなと思いますね。例えば、当社が開発を手がけたゲームの中にはパズルゲームなど、ストーリー性はそれほど強くなくても、キャラクターの個性を生かした演出や遊び方で大きなヒットを記録しているものがあります。
(*: IP – intellectual property 知的財産 )
―― そういう意味では、最初から他分野への展開を狙った作品作りは、現時点ではなされてないと。
そうですね、まずはそれぞれの作家さんに読者から支持される作品を作っていただくということを考えています。作品をユーザーに楽しんでもらう事がなにより大切ですね。
―― ユーザー数が〇〇人くらいに到達したら、次のステップを踏むというような計画はありますか。
インターネットの世界は未来を予測するのが非常に難しいです。例えば、新しいデバイスが登場したりすると世の中のルールが変わってしまうことがあったりしますよね。ですので、計画について細かくマイルストーンを置くというよりは、走りながら考えていくほうが、この業界では合っているのかなと思います。
―― 海外展開はどのように考えていますか?
今年7月に台湾で、10月には韓国でcomicoのサービスを開始しました。各地域では日本の人気作品をローカライズして提供するだけでなく、日本での取り組みと同様に現地の作家を発掘し、それぞれの地域で作品を公開するということも行っています。
―― いずれは海外のほうが大きい規模になるようになどということは考えていますか?
そういう計画は、今の所もっていません。数の部分でも人口規模などによって日本とはインパクトが異なってきますし。
前編ここまで。
中編: comicoで連載中の作品は、どんな話を掲載するかは作家側に決定権があります。
インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野
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