編集長の部屋(2)中編:コミックゼノン花田健編集長

編集長の部屋
2014.07.28

「編集長の部屋」(2)月刊コミックゼノン編集長、花田健さん(中編)です。

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- 前編「読切掲載専門のピンクページは単行本にならないので雑誌としては赤字ですが、意地で続けています。」

- 編集長の部屋とは?

<中編>

主人公が成長していく様を見せていくのが重要なのではないかと思っています。

――ゼノンの雑誌としてのコンセプトは?

「傾く」(かぶく)がコンセプトです。『花の慶次』の考え方にもありますが、「面白がろう」ということで、「傾く」としています。ただ、そんなに強くは打ち出してはいません。ある雑誌で不良系作品が当たり、そういう作品が雑誌に増えた経緯の中に、元々そういうコンセプトがあったわけではないと聞いたことがあります。色々な作品を作っていたら、たまたま面白い作品が生まれ、それが後に雑誌の色になったという流れがあったと思います。

ただ、ぼんやりしてしまいますが、「普通の人が普通に読むマンガ」というものは目指しています。判らない人がいても良いというようなことにはならないようにしたいと考えています。

――現在のコミックゼノンは、どのように読切や連載の開始を決めているのですが?

各担当者が、これはと思うネームを封筒に入れて「連載ボックス」という編集部に置いてある箱に入れます。封筒にはキャッチコピーや企画意図など情報を書きます。これを、編集部全員が読み、感想などを封筒の裏に書きます。それをもとに全員で議論します。そして、編集長の私が一旦預かり、「連載します/しません」「ここを直せば連載OK」「まずは読切掲載から」などということを決めます。

私が編集長になって以来、毎週木曜日に、編集部全員で「お昼を食べる会」というものをやっています。その前の週までに「連載ボックス」に入れられた作品を全員が読んで、この場に臨むという形を取っています。これとは別に、売り上げや企画などについての話をする月次の編集会議をしています。

――月に何本くらい「連載ボックス」に作品が入るのですか?

だいたい月に10~15本くらいです。

各編集者には私から、これから半年分程の連載開始・読切掲載のスケジュールなどは渡しています。それを見て、各担当者は「連載ボックス」に、いつ連載ネームを入れるか見計らっています。

また、現在は「ゴールドゼノン」(黄色いページ)を用意して、読切掲載した人の中で良い作品について、単行本1冊分にあたる短期集中連載をする取組をしています。これまで6本くらいの短期連載をして、実際に単行本を出しています。ちなみに、読切掲載をするピンクのページは「フレッシュゼノン」と呼んでいます。

――いいですね!新人は嬉しいと思います。

書店さんからは、ただ新人さんということだけが売りとなって作品が売れるという事はないと言われていて、この取組については今後どうやっていこうか模索中です。初単行本が出る前から、新人さんが注目を受けるというのはなかなか難しくて、初速が上がらないと続けにくいのですが、やはり新人さんの単行本を出していく事を優先して、この取組を始めました。

――ちなみに、単行本の初版は最少でどれ位ですか?

1.2万~1.5万の間で出しています。

――現在のゼノンの読者層は?

ハガキが返ってきている所だと30代後半から40代前半。男性が7割くらいです。単行本では女性の比率がもっと上がります。今後は、やはり平均的に若くしていきたいです。

ちなみに、表紙が原先生調のほうが、返本率が低く、売上が高くなる傾向があります(笑)

――持ち込んでくる新人の傾向にも、原先生テイストは反映されているのですか?

いえ、それが全く逆で、うちの持込は8割くらいが女性です。

雑誌を作っていく場合は、主として「!!」というマークが煽りに入るような、強大な敵を倒す成長物語となるような骨太な物語を太い幹として中心に据え、女性らしい細やかな作品を葉っぱとして生い茂らせるようなイメージを持っています。そういう意味では、太い成長話をもっと持って来て欲しいなと思っています。

――女性が多いというのは失礼ですけど意外ですね。

新人では女性作家さんの方が掲載できそうな雑誌を研究していて、うちに来ているのではないかなと思います。

――トキワ荘PJの中でも、おっしゃっているような成長物語を描く作家は、圧倒的にジャンプ志望者であることが多いですね。

どこの雑誌でデビューしようと、早くデビューした方が自分の為になると考えている作家さんたちが来ているような気がします。現在連載中の作家さんの中にも、元々ゼノンを詳しく知っていたわけではないが、環境を考えてうちに来たという人もいると思います。

ウチには、マンガ雑誌とは「生き方の情報誌」という考え方があるので、主人公が成長していく様を見せていくのが重要なのではないかと思っています。

戦いにおいて、かっこよく負ける姿を描いたり、卑怯なことをしたら良くないということを描いたり、生きていく為の情報になると良いなぁと思っています。

今の「カッコいい」ということはこういうことじゃないかという作品をやりたいです。半沢直樹は本当にやられたと思いました(笑)

――新人作家さんについて、なんとなく原先生と北条先生が描く作品が既にあるので、そういう作品ではない作品を雑誌が求めている可能性があるようにも思っていましたが。

そんなことはないですね。むしろ、男女問わず生意気な人がいないというか、向かってくるような新人さんを求めています。

原さんの言葉ですが、私も本当にそうだと思っていることがあります。

・「読切を載せたい」と思っている人は、読切にも届かない。

・「連載を載せたい」と思っている人は、読切にやっと掲載されるくらい。

・「ゼノンで1位になりたい」と思っている人は、やっとゼノンで4-5位になる。みたいなところがあるかなと思います。

そういう意味では、AKBは素晴らしいですね。「来年1位を取る」みたいなことを選挙直後に言いますよね。そういうところが重要なのではないかなと思います。

AH01 (c)北条司/NSP 2010

 

ホリエイズムとは「漫画は生き方の情報誌」「漫画の力は凄いじゃん!」という考え方

――新人作家にとって、判りやすく競い合う場は少ないと思います。持込だけをしている人の場合、編集者さんと向き合うだけになって、結果的に自分がどれ位の位置か見失う人が多いと思いますが。いかが思われますか?

そうですねぇ。私は作家さん全員に言いたいですが、編集者なんてそんな偉くないと、皆に判って欲しいです(笑)特に持ち込みをしている新人の方にはですね。

実は私は、持込は最初のうちの度胸試しくらいにしか考えていません。むしろ、投稿をおすすめしています。持込の場合、一人の編集者の意見しか聞けませんが、投稿であればその編集部の複数の人が目を通して、投稿者の作品に興味がある人が必ず連絡してきます。その中で、最も自分が目指す方向に近い考えの人と組むのが一番良いのです。もう、一つの作品を描いたら、全ての新人賞に送ってしまっても良い位だと思います。

昔は、マンガ家デビューは狭き門でしたので、持込みをしてどうにか目の前の人をという点もあったかと思いますが、今は新人さんの方が編集者を選ぶ時代なんじゃないかなと思います。

――相性が良い編集者を選ぶと言うことでしょうか?

いや、相性と言うよりは「見るべき先が近い人」だと思います。連載作家さんでも新人さんでも、迷った時に、ハッと見るべき先を思い直させてくれるような編集者こそ、本当に相性が良いのだと思います。

――ゼノンさんの中で、編集者の方針みたいなものは共有されているのでしょうか?

全員が全く同じ考えと言うわけではないと思います。でも、ゼノンの入っているビルは、会社のビル自体にバーや食事の出来る所がありまして、頻繁にそこで編集者同士も話をしています。そういったところで、ゼノンの遺伝子みたいなものは共有されていると思います。そういう意味では「絶対掲載はありえない」みたいな作品が、私のところに上がってくることは少ないです。

――編集部の方はどんな方々なのですか?

色々な出版社で編集者経験のある者がいます。生え抜きは少数ですね。それでも、あまりマニアックにならずに、ホリエイズムとして共有されている遺伝子の中で、作品を作っていけていると思います。

堀江は寂しがり屋なので、とにかく編集者としょっちゅう飲んでいます。そこで、直接色んなことを言われています。結構、直接的に「お前の編集しているマンガが面白くない」みたいな話も出ます。ちなみに私は、堀江からのそういうプレッシャーに一番上手く対処できるから、編集長をやっているような気がします(笑

――ホリエイズムとは?

「漫画は生き方の情報誌」「漫画の力は凄いじゃん!」というような考え方です。

噴き出しの中の文章で説明するのではなく、絵で多くを表現するのが、マンガの本質ではないかと考えています。他のマンガが間違っているという意味ではなく、外国人が見ても、あまりマンガを読まない人でも、面白いと思ってもらえるようなものこそ大事だと思います。

<中編ここまで>

後編:海外も視野に入れた「サイレントマンガオーディション」を開始しました、53の国と地域から、514作品が集まりました。

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インタビュー・ライティング:トキワ荘プロジェクト 菊池、番野

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