3年をタイムリミットと決めて連載を獲得。30歳からの挑戦。

参加者の声

ヤングアニマルZEROにて「数学ゴールデン」を連載中のトキワ荘プロジェクト参加者・藏丸竜彦さんにインタビューしました。

地元に居ただけだったらデビューできてなかったと語った藏丸さん。当時30代、最後の3年と一大決心をしてトキワ荘プロジェクトに参加し、見事連載のチャンスを掴みました。担当編集者との出会いや、刺激の連続・ネタだらけという共同生活についても聞いています。

藏丸竜彦さん
トキワ荘プロジェクト参加者(入居当時30歳)
連載中!「数学ゴールデン」/ ヤングアニマルZERO 白泉社

30歳、最後の一手

── 藏丸さんがトキワ荘プロジェクトに参加しようと思ったきっかけは何ですか?

トキワ荘プロジェクトに参加する前に、ちょっとだけ雑誌に読切が載ったんですが、その後だらついてしまって… 。本当に気を引き締め直すためにも、30歳からの“ラスト3年”って形で参加を決めました。

── 一大決心をされて、参加を決めたんですね。

そうですね。ただ上京してきただけだったり、地元に居ただけだったらデビューできてなかったと思いますね。トキワ荘プロジェクトに参加してからは、本当に〆切と刺激の連続でした。

3年後までに結果を出さなければいけない

── 藏丸さんにとってトキワ荘プロジェクトの魅力とは?

やっぱり3年って区切りがあるところがいいかなと思います。漫画家ってある意味、ずっと目指し続けられるんで……。

── なかなか自分で区切りをつけるのは難しいですよね

そう、それがトキワ荘プロジェクトは3年の入居期間がある、となると「ここを出なきゃいけない」ってタイムリミットの意識が芽生えて。それだけじゃなくて、月次の活動報告とか更新審査なんかもあるから、期限を意識する機会が多い。その分、危機感が持てますね。

編集者との新たな縁

── トキワ荘プロジェクトでは何が得られましたか?

担当さんとの繋がりが持てましたね。ちょうどトキワ荘プロジェクトから授賞式*に呼ばれて。そこで今の担当さんと出会って、連絡先をもらったという経緯です。

トキワ荘プロジェクトがなかったら、そこは繋がっていなかったと思います。

トキワ荘プロジェクトの年2回のイベント

プロのマンガ家や編集者を招いたイベントを年2回開催しています。半期の成績優秀者を表彰する表彰式も実施。ほかのハウスの人と交流できる貴重な機会でもあります。

トキワ荘プロジェクトの年2回のイベント

プロのマンガ家や編集者を招いたイベントを年2回開催しています。半期の成績優秀者を表彰する表彰式も実施。ほかのハウスの人と交流できる貴重な機会でもあります。

── ほかのハウスの人と交流できる貴重な機会でもあります。

今「数学ゴールデン」の連載をしている『ヤングアニマルZERO』の担当さんも、トキワ荘プロジェクト伝手で連絡が来た方です。

── そうだったんですね!良いご縁をつなぐことができて私もうれしい限りです。

正直、積極的に担当編集者を探していたわけでもなくて、どこの雑誌でも、出られたらいいなと思っていて。
ただ、これやってみませんかという企画を編集者から提案してもらったときには、必ず1回はネームを出してますね。それでうまくいかなかった、っていうのは何回もありますけど。

比較的、担当さんは多くついているほうではあると思うんですが、逆に一番(コンペなどで)負けてる可能性ありますよね(笑)

3年経った時、諦めがつくくらいやらないと。

── トキワ荘プロジェクトに参加してから変わったことはありますか?

ここに来るとき一個決めてたのが、漫画以外の仕事はしないこと。もちろん、アシスタントを除いて。だから、金銭的にも厳しい時期があったり…(笑)。

── 漫画家みなさん、格闘しているところですよね。

これを言うのはあれですけど、トキワ荘プロジェクトに居続けちゃいけないなっていう意識はあったかな。

3年経った時に、どうにかなっとかなきゃなっていうか、逆に言えば諦めつくくらいに一生懸命やんなきゃなっていうのがあるかも。

── 藏丸さんは3年目の目標を達成し、4年目に入るわけですが次の目標は何でしょうか?

4年目の目標は、もう1本連載を取ることですね。

共同生活はネタまみれ

── 他にトキワ荘プロジェクトに参加して良かったことがあれば教えてください。

人間観察ができることかな。一緒に住んでいて、全然違うなってところも、自分もこんな感じなんだろうなって思うこともあったり。最近では、階段を降りてくる足音で誰だかわかるようになった(笑)

── 共同生活は確かに人間観察にはもってこいですね。トキワ荘プロジェクトを舞台にして漫画を描いている方もいますよ。

トキワ荘プロジェクトから卒業したら描くかも。入居してたら描きにくい(笑)シェアハウスって言ったら、テラスハウスじゃないけど、覗き見てみたいっていう読者の需要はあるのかなと。トキワ荘内で恋愛はないけど。

仲間からのプレッシャー

── 同じ目標を持つ方々と一つ屋根の下での生活ってぶっちゃけどうですか?

周りの人が気になるっていうか…。

── 気になる?

たぶん誰でも上京したり、アシスタントを始めたりするときは「今年以内にデビューする」とか目標を持っているので、刺激になります。

── なるほど、刺激ですか。

隣の部屋の人がアシスタント始めたって聞くだけで、焦っちゃったり。「あ、進んだな」って。で、自分も、やんなきゃなって思う。やっぱり気にしてないようで、気にしてるんだなとかはあります。

点と点、繋がってできたのが「数学ゴールデン」

── 先ほどちらっとお話に出ましたが、入居後の活動について教えてください。

今は『ヤングアニマルZERO』で「数学ゴールデン」を連載してます。

数学ゴールデン

「数学ゴールデン」は”数学オリンピック”で優勝する夢をもつ主人公とそんな彼になぜか付きまとう女子との青春ラブ?コメディーです。新増刊『ヤングアニマルZERO』にて連載中!

数学ゴールデン

「数学ゴールデン」は”数学オリンピック”で優勝する夢をもつ主人公とそんな彼になぜか付きまとう女子との青春ラブ?コメディーです。新増刊『ヤングアニマルZERO』にて連載中!

2年前、2回目の上京して、ここに住み始めたときにも、漫画のネタねえなと思ってて…。

そんなとき、友人に数学の話をすると「面白そうだね」って言われたことを思い出して。実はもともと数学教師をしてました。だったらやってみようかな、ってできたのが「数学ゴールデン」。

── なるほど!!

点と点が線になる、じゃないけど、つながらないと思ったことが繋がったりするから。
おもしろいなと思うんですよね。だめなときに結果が1個ぽって出ると、また行けるかもと思えたり。

半径5mの関係性

── 〆切ぎりぎりになったとき、入居者の方たちに原稿を手伝ってもらうことはあるんですか。

それはないかなあ。仕事手伝ってくれって頼んじゃうと、ちょっと一緒に住むうえで守ろうとしている「近さ」を超える感じが…(笑)

もし家が違ったら頼んでるかもしれないくらいの関係性ではあるけど。

── 何事も一定の距離感大事ですよね。入り込みすぎるとこじれることも多いですし。他に何か、入居者同士の交流ってあるんですか?

あるとしたら、新しいメンバーが入った時の歓送迎会かな……。あとは、年末年始とかたまに飯食いに行きますけどね。

── そうなんですね……!では、日常生活ではどうですか?

共同生活でありがたいと思うのは、なにより部屋にこもってネームを書いているとき。

パッて下(共有スペース)に行って誰かがいるときに話をするのは、めちゃくちゃ気分転換になる。漫画家ってうまくいかないと、やっぱり社会から隔離された状態になるわけじゃないですか。何やってんだろうって。そんなときに事情をわかってくれている人が近くにいるとすごく助かる。

社会人の友達とできる気分転換もあるけど、トキワ荘プロジェクトのメンバーだからできる気分転換も確実にあります。

僕より10個くらい年が下の入居者もいて、そういう人と、夜通し話したりすることもあったな、ここで。

寒いからハロゲンヒーター持ってきて。役に立たなかったけど。(笑)

▲共有スペースで取材していました。

リビングにネームを置いて、感想を。

── 入居者同士で歓送迎会以外にやってることってあるんですか。

ネームをここ(共有スペースの机)に置いて、感想を書いてもらうっていうこともあったかな。紙とペンも一緒に置いてあって……。

── ほかの人の意見を聞いてみるってことですね。

誰かの意見が正しいというわけではないんですけどね。誰かが面白いって言ったけど、逆もあるし。それも経験できますね。

── 確かに。よりよい作品づくりにつながりそうですね。

でも、結果が出なかったら、プライドがたくましく育ちますね、僕は。。どっかで崩さないと、とは思うんです。もちろんプライドを保たなきゃいけないトコロもあるけど。イヤになる(笑)

そんな経験を経て、とりあえず相手から提案されたものはやってみる、修正は受ける、と思うようになりました。謙虚な姿勢で。

でも原稿あがる直前は、踊ります。

── 詳しく教えてください(笑)

終わるなって思いだすと、いったん踊る。そこは調子に乗ります。※写真参照

▲原稿の終わりが見えた藏丸さん

── 喜びの舞ですね…!(笑)

── たくさんお話聞かせていただきありがとうございました!では最後に、トキワ荘プロジェクトへの参加を迷っている方に向けてメッセージを。

トキワ荘プロジェクトは、辞めるか続けるか迷っている人の選択肢になるかもしれません。

1人で3年やって結果がでないなら、多少家賃が下がって生活費が下がって、そんな環境のトキワ荘プロジェクトで3年やったほうがいいんじゃないかな。

トキワ荘プロジェクトは1人でやるよりは、良い意味で負荷が多いから、自分を変えるきっかけになると思う。

結果がでるか出ないかを、住んでいるメンバーから、すごく近くで見られてるシビアな環境だし(笑)同じ志がある人と一緒に住むってことは、人生でなかなかできない経験だから。自分の想像以上の経験ができると思います。

── ありがとうございました!!

2019年12月13日

藏丸竜彦さん
「数学ゴールデン」1話~2話発売中!(2019/12/9現在)。
奇数月9日発売の『ヤングアニマルZERO』にてお読みいただけます!数学ゴールデン第1話の試し読みはヤングアニマルZERO公式tumblrで!