マンガ家としての自分の位置を確認できたから、次に進むことができた。

参加者の声

トキワ荘ハウス入居者インタビュー第3段。

今回はトキワ荘プロジェクト卒業生でもあり、2014年に「潔癖男子!青山くん」を連載し、2017年にはアニメ化もした坂本拓さんにお話を伺いました。お仕事場におじゃましました・・!

坂本 拓 さん
トキワ荘プロジェクト(当時27歳)
「服福人々」連載中!/となりのヤングジャンプ
「潔癖男子!青山くん」1巻~18巻(完結)発売中!

── 坂本さんが、トキワ荘プロジェクトへ参加されたきっかけを教えて下さい。

ちょうどルームシェアをしていた家が更新の時期になって、引越し先を探していた時にトキワ荘プロジェクトを知りました。

たぶん…もともとテレビが何かで見たことはあったと思いますが。

── そうだったんですね!トキワ荘プロジェクトの最初の印象はいかがでしたか?

家賃やお金の部分で負担が少なくなるのは魅力でしたね。都内の1人暮らしはなにかとお金がかかるので…。

もともと富山県にいたんですが、今まで漫画家を目指す人が周りにいなかったので、どんな人がいるのか気になりました。

── 自分と同じように漫画家を目指す人との共同生活なんてかなり新鮮ですよね。

そうですね。当時は顕在化できていなかったですが、ずっと1人でやってきたので、自分の置かれている状況や気持ちを同じ境遇の人に共有したかったんだと思います。

1人でやっていると、自分が今マンガ家としてどの位置にいるのかわかりにくいので。そういった意味でも、自分にとってはトキワ荘プロジェクトの参加は良かったと思います。

「潔癖男子!青山くん」は、トキワ荘プロジェクトから生まれた…!?

── トキワ荘プロジェクト参加後はどのように過ごしていましたか?

開催しているイベント*に結構参加してましたね。

イベントには、作家さんや編集者さんが参加していて、そういう人たちと関わって喋る機会は新鮮で、好奇心もあり積極的に参加してました。

単純に楽しかったですし、マンガ業界に関わる物事に触れられるのが嬉しかったですね。

トキワ荘プロジェクトの年2回のイベント

現在、プロの漫画家さんや編集部を招いた年2回のイベントを開催しています。ほかのハウスの住人と交流できる貴重な機会でもあります。

── イベントではどのように過ごすことが多かったのですか?

できるだけネームや漫画を見てもらうようにしてたと思います。

他のハウスの人とイベントを通じて仲良くなったりもしました。その後、定期的に会うこともありましたね。

── トキワ荘プロジェクトへ参加してから漫画の面はどのような変化がありましたか?

当時、入居者同士で作った「コミティア部」というものがあって、みんなでコミティアに出す同人誌を作ってました。
その時に4コマ漫画で青山くんを描いていたんです。

── そうなんですね!?まさか青山君の出生がトキワ荘プロジェクトからだったとは…

青山くんはトキワ荘プロジェクトの子と話していて、思いついたんですよね。

当時、青山くんの企画自体は形になるなと思っていたので、読み切りにしてみて、コミティアの出張編集部で見てもらってたと思います。そこで担当がつきました。

潔癖男子!青山くん

サッカーU-16日本代表MFの天才プレイヤー青山くん。完全無欠な彼は極度の「潔癖症」…!サッカー部を巻き込み、勝利へ導く!?芸術的な潔癖プレイスタイルをお見逃しなく。サッカーU-16日本代表MFの天才プレイヤー青山くん。完全無欠な彼は極度の「潔癖症」…!サッカー部を巻き込み、勝利へ導く!?芸術的な潔癖プレイスタイルをお見逃しなく。
となりのヤングジャンプで試し読みができます!

── まさに、トントン拍子ですね

でも、トキワ荘プロジェクトに入って2年目くらいですかね、賞が引っかかるけど読み切り掲載にはならず…という時期が続いてて…。

そのあたりから、漫画を描かないことが多くなりましたね。

2年目くらいで人脈が広がり始めて楽しかったという時期でもあったので、1回人脈を広げるために時間を使おうとシフトチェンジしました。

── 具体的にはどんな活動をされていたんですか?

漫画家が集まるバスケの会に行ったりしていました。

そこに集まるマンガ家は、ちょうど自分と同じ境遇か、先を行っている人、連載している人など様々でした。ちょっと自分よりも上の人たちが多かったですね。

そんな環境で、ジャンプで1回連載したことある人や、読み切り載っている人たちとしゃべってみて「自分も頑張れば遠くないんだな」と感じて…

その時に、もう一回やってみようと思えたんです。

── まさに、最初に言っていた「自分の立ち位置」が確認できたということでしょうか。

そうですね。立ち位置知れるのは自分にとってすごく大きかったです。

自分がどういう場所にいるのかっていうのがわかってないと、先が見えずらいというか。

── 立ち位置がわからないとやみくもに進むしかなくなりますよね…それが近道なのか、遠回りかどうかもわからずに…

特に、地方にいるとそう思います。なので、東京に出てきたのは本当によかったなと。

東京で、最前線にいる人たちの近くにいたほうが良いと思いますね。

── そうなると、行動力が鍵になりそうですね。

そうですね。描くのもめちゃくちゃ大事なんですけどね。

行動していろんな人に会うのも同じくらい大事です。

── 先生はもともと行動力がある方だったんですね。

いや、行動力ないですけどね(笑)

最初は、漫画の世界を渇望していたんだと思います。富山県にいたころは漫画の世界が遠かったので。

今いる場所が、自分の居場所じゃないとずーっと思っていたので…。

東京に来て、漫画の世界に触れることができるので居心地よかったです。

トキワ荘プロジェクトは「漫画」のノウハウが蓄積できる場所

── ご自身の経験から、トキワ荘プロジェクトはどんなことが得られる場所だと思いますか?

個人的に得たものは、本当にいっぱいあります。

人脈もそうですし、あとは漫画のやり方や考え方を見て知ることができたという点ですね。
なにより、それを話したり考えたりするのが楽しかったです。

── 確かに、1人じゃ体験できないことですもんね。

1人でやっている時よりは「漫画」というものを知り、学ぶ速度が速まった気がします。

人の意見を聞けたというのは個人的には大きかったですね。

当時は、ネーム会のようなものもやっていて、人の作品なら客観的に見ることができるので、人の作品やネームを見て気づくことが多くて、その点も勉強になりましたね。

話している中で「そんな考えなかった」という思う場面も多かったです。

自分の漫画の考え方とか、ノウハウが積みあがった感じがしますね。

── 入居者同士での交流で得たものが多かったんですね。

そうですね。なので、トキワ荘プロジェクトを出てからも、ちょこちょこOBOGとしてイベントには顔を出していましたね。

── ぜひまた、イベントに参加してください…!

「漫画はキャラが大事」という本当の意味を知る

── トキワ荘プロジェクトに参加していた時に、心に残るエピソードはありますか?

いい意味で変な人が多くて面白かったですね(笑)

初日から、トキワ荘プロジェクトに入居した人が日常的に変な人で、詳しくは控えますが、面白かったです(笑)

── 気になります…(笑)

僕、もともとオタク気質じゃなくて。マンガ業界にいるけど、そこまで漫画に詳しくはないんです。

トキワ荘プロジェクトに参加してからは、漫画の文化に詳しい人がいたり、サブカル的な人がいたり、新しい人に出会うたび「こんな人いるんだ・・・」て思いましたね。

特に、漫画という文化が本当に好きなんだなって人が多かったです。

── すべての人が表現者ですからね…個性的な人は必然的に多くなりますね。

そういった人の、いろんな漫画を見て「漫画はキャラが大事」っていう本当の意味がわかった気がします。理屈ではわかっていたんですけどね。

やっぱり面白くない漫画は、キャラクターがその人である必要性が無かったりしますし。

面白い漫画は、キャラクターに人間味があったり、あたかもそこ(現実)に存在するように感じさせるんです。

何が面白くて、人を引き付けるのか、逆に、つまらないと思わせるのかを学びましたね。
今でも勉強中なんですけどね。

── ほかに心に残っていることはありますか?

最初は、THEトキワ荘を彷彿とさせる物件に驚きましたね。

入居してから、初日に風呂掃除しました。掃除してねーなこいつらって・・・!思って(笑)

── そうなんですね…リアル青山くんですね…(笑)

── トキワ荘プロジェクトのハウスは自治寮のようなものなので、誰かがやるのを待つのではなく坂本さんのように自主的に動いて掃除したり、ルールを決めるのも共同生活の醍醐味です!

ルールについてはもともと掃除当番が決まってましたが、全員そろっているときに掃除したりもしました。

そこまでかっちりしたルールは決めてなかったですけどね。

── トキワ荘プロジェクト卒業後は、どのような活動をされたのでしょうか。

トキワ荘プロジェクトは、ちょうど3年目過ぎたくらいに、潔癖男子!青山くんの連載が決まって退去しました。

そこからは3年半くらいずっと連載の日々でしたね。
その後はちょっと休んで、2019年11月21日(木)にとなりのヤングジャンプで「服福人々」という連載が始まりました。

服福人々
会社員の佐久間は、疲弊する日々の中で洋服を買うことが唯一の楽しみ。元・デザイナー廻谷との出会いを機に、選ぶ洋服だけでなく人生さえも変わっていく。(となりのヤングジャンプ連載中!>)

── 青山くんの連載が終わって、休んでいる間は何をされていたんですか?

休んでいる間に、本当はSNS使って漫画関連のコンテンツを作る活動をしたかったんですけど、面倒くさがりで…結局やらなかったですね。(笑)

あと回ししているうちに、連載企画が通って新連載が決まって・・・といった流れです。

── ほかに、こんな活動したいということはありますか?

それこそ、トキワ荘プロジェクトのイベントにOBOGとして参加したいですね。

自分もプロの漫画家の先生が来てくれた時に、漫画を見てアドバイスをもらったんですが、そのアドバイスがすごく刺さって。

なので、そういう風に自分も今のトキワ荘プロジェクトメンバーに関わる機会があれば、参加したいですね。時間が合えばですが…!

── これから連載で忙しくなるとは思いますが…お声がけさせてください!

── (参加者が、坂本拓先生に漫画を見てもらえる日も近いかも…)

出会いは、人としての成長だけでなく、作家性も生む

── トキワ荘プロジェクトへ参加して、担当がついてデビューして、連載作家となった坂本さんですが、これまでを振り返ってみていかがでしたか?

改めて、「できるだけいろんな人に会って、いい思いもいやな思いもたくさんしたほうが良い」と伝えたいですね。

結局もくもくと1人で制作に取り組むだけだと、視野が狭くなってしまうんです。

なので、できるだけ自分の中の引き出しを増やしたほうがいいです。

自分の心が動いたり刺さったりするような体験が多いほうが、人としても成長しますし、その多さが、その人の作家性にも繋がるので。

こもった良さが出せる性質の作家さんだったらいいのかもしれませんが、外に出たほうが確立高いんじゃないかなと思います。

── まさに、坂本さんが実体験して感じたことですね。

── いろいろとお話聞かせていただきありがとうございました!

── 最後に、これからトキワ荘プロジェクトに参加する方へメッセージをいただけないでしょうか。

漫画家を目指していてくすぶっている人にとって、環境変えるのは一番いい手だと思います。

正直、環境が合わなかったらそれはそれでしょうがないですけど。

くすぶっていて何も行動しないというのが一番悪い選択だと思います。

なにかしら行動はすべきかなと。

その選択肢の一つに、トキワ荘プロジェクトのシェアハウスはいいんじゃないかなと思います。

── 坂本拓さん、ありがとうございました!

2019年12月20日